投資の魅力は資産が増えることですが、言うまでもなく損をする可能性もあります。
株の取引で利益を出すということは「ひとよりも安く買い、ひとに高く売りつける」ことです。
証券会社や投資機関、庶民にとっては凍り付くような損失でも痛くもかゆくもない富裕層。
そんなひとたちと、日々あくせく働くサラリーマンがお金を取り合いっこしても、勝てるわけがありません。理由はシンプルで、本業ではないから。
時間を味方につける積立NISAやiDecoといった長期投資ならプラスも期待できますが…
損をするのが分かっているので、私はほとんど短期の株取引をしません。
ただし、運の要素が大きいIPO投資なら話は別。
2018年に初めて証券会社の口座を開設、住宅ローンや教育費で資金は自由にできる資金は数百万しかない、恐ろしくて証券会社の店頭には入ったこともない。
そんな私の目線で2019年から楽しんでいるIPO投資をご紹介します。
私と同じレベルの資金でこれからIPO投資を始めてみようという方の『どのくらい当選する?』『どのくらい利益になる』という疑問にもお答えできれば。
私も何度も損しています。
- IPO投資とは
- 資金数百万の庶民投資家でどのくらい当選するか
- 庶民目線のおすすめ証券会社
IPO(新規公開株)とは
IPOとは未上場の株式会社が新規に証券取引所に上場する際、投資家に株式を取得させることを言います。新しく市場に公開するので「新規公開株」とも呼ばれます。
東証プライム市場、スタンダード市場、グロース市場といった証券取引所に株式上場の際に、企業や既存株主が保有していた株が証券会社を通じて投資家に配分されます。
企業にとっては資金調達、社会的地位向上のメリットがあります。
証券取引所に上場された後は、通常の株と同じく誰でも取引ができるようになります。
IPO投資とは
新規株式上場に先立って、企業は証券会社に新規発行株を委託します。証券会社は投資家に対してその株をいくらで売るかを決定します。これを「公募価格」と言います。
IPO投資家は決定した「公募価格」の新規未公開株に対して『株を購入する権利』を得るために抽選に参加します。見事当選した投資家は、市場で売買される前に「公募価格」で株を購入することができます。
その後株式が上場し、証券取引所で最初に取引された株価を「初値」と言います。
IPO投資とは、新規公開株に「公募価格」で購入するということの抽選に参加し、当選したら購入し、上場後に売却。その差益を得ることを言います。
初値で売却することを初値売りと言います。
「初値(市場でみんなが初めて買う株価)」ー「公募価格(当選してお得に買えた株価)」=「利益」
例えば抽選に参加、当選し公募価格3,000円(必要資金300,000円)で新規公開株を購入することができたとします。
初値が6,000円(600,000円)になれば、初値で2倍で売れたことになり差額3,000円(300,000円)が利益となります。
初値が付いた瞬間に投資家のトレード対象になるので、上下激しい値動きとなります。
投資初心者はトレードに巻き込まれる前にサクッと売却して利益を確定させる「初値売り」が推奨されています。
2019年、2020年、2021年 IPO結果
投資である以上、損をすることもあります。私も何度も損をしています。
が勝率の方が高いのがIPO投資の人気たるゆえんです。
直近3年間の勝率を見てみましょう。
2019年
- 2019年に実施されたIPOは90回。
- 初値が公募価格を上回ったのは77回。
- 初値が公募価格を下回ったのは12回。
- 引き分け(公募同値)1回。
- 勝率85.5%。
2019年に最も利益が出たIPOはサーバーワークス(4434)。
公募価格4,780円に対し初値18,000円。当選者は初値売りで一撃1,322,000円の利益となりました。
2020年
- 2020年に実施されたIPOは93回。
- 初値が公募価格を上回ったのは69回。
- 初値が公募価格を下回ったのは23回。
- 引き分け(公募同値)1回。
- 勝率74.1%。
2020年は新型コロナによる株価大暴落のあおりを受け、2月~4月は公募割れが多く発生しました。それでも年間を通すと勝率70%超え。
2020年に最も利益が出たIPOはヘッドウォーターズ(4011)。
公募価格2,400円に対し初値は28,560円。当選者は初値売りで一撃2,616,000円の利益。
24万円が285万円に化けています。
2021年
- 2020年に実施されたIPOは126回。
- 初値が公募価格を上回ったのは104回。
- 初値が公募価格を下回ったのは20回。
- 引き分け(公募同値)2回。
- 勝率82.5%。
2021年に最も利益が出たIPOはアイ・パートナーズフィナンシャル(7345)。
公募価格3,120円に対し初値は9,880円。当選者は初値売りで一撃676,000円の利益。
過去5年の勝率は?
2016年~2020年と5年間の勝率です。
年 | 回数 | 結果 | 勝率 |
2016年 | 83回 | 67勝15敗1分 | 80.7% |
2017年 | 90回 | 82勝8敗 | 91.1% |
2018年 | 90回 | 80勝9敗1分 | 88.8% |
2019年 | 90回 | 77勝12敗1分 | 85.5% |
2020年 | 93回 | 69勝23敗1分 | 74.1% |
抽選に参加し当選することさえできれば、初値売りすることで高い勝率の投資です。
IPOのデメリット
勝率が高いとはいえ、良いことばかりではありません。先にデメリットから。
滅多に当選しない
一撃数十万~100万オーバーの利益が出るIPOはまさにプラチナチケット。
わずかな当選本数に応募が殺到するため、当選確率は極小です。
数万円前後の利益が見込める程度のIPOでも、当選確率は1%を切ります。
抽選参加可能の証券会社から数百回申込み、落選を繰り返し、やっと1回当選する感覚です。
損を出すこともある
投資なので損が出ることもあります。
私の3年間の経験の中で最大の損失は2021年12月上場のFinatext HD(4419)。
公募価格1,310円に対し初値1,030円。マイナス28,000円の損失となりました。
公募価格1,290円に対し初値990円。30,000円の損失となりました。
初値が公募価格を下回ることを「公募割れ」と言います。IPO投資には公募割れで損をするリスクがあります。
公募割れはわざわざ抽選に参加する⇒当選して喜ぶ⇒割高で株を購入する⇒損をすることになり、そこそこショックを受けます
IPOのメリット
私自身はデメリットよりもメリットが上回ると思っています。
当選すればハイリターン
IPO投資にチャレンジした3年の経験の中で私はまだ一撃50万円以上のプラチナチケットに当選したことはありません。
最大の利益はSMBC日興証券で当選した2021年10月上場のアクシス(4012)。
公募価格1,070円に対し初値5,700円。463,000円の利益になりました。
次に2022年auカブコム証券で当選したエニーカラー(5032)。
公募価格1,530円に対し初値4,810円。5,000円で売却したので347,000円の利益になりました。
リターンが5~10万円程度のIPOであればそれなりにコンスタントに当選することができます。
ずっと抽選参加を続けていると、ボロ負けするIPOに出くわします。
2020年で最もボロ負けのIPOは新型コロナの大混乱真っただ中の3月30日に上場したニッソウ(1444)の公募3,750円、初値2,800円、マイナス95,000円です。
2021年のボロ負けIPOはTHECOO(4255)で公募7,200円に対し初値6,100円、マイナス110,000円。
当選した際に得られる利益に対してリスクは限定的。ローリスクハイリターン投資と言えます。
落選してもお金は1円も減らない
IPO抽選に参加し落選しても、ペナルティはありません。
落選しても1円も減ることなくお金が帰ってきます。
ここが宝くじとの違いです。宝くじは落選すれば購入費用分は損をします。
IPOは抽選に参加するために前受け金は必要ですが、抽選に参加し当選しなければ全額そのまま戻ってきます(後述しますが、参加するIPOの公募価格分の資金を入金する必要がある証券会社と、一切不要の証券会社があります)。
抽選に参加し、当選すれば(購入する権利を得れば)本当に購入するか決め、購入申し込みをすることができます。
特別な知識やトレードの経験は必要なし
株の取引きで利益を出す、ということはひとより安く株を買い、高く売ることです。
初心者は高い確率で損をすると思います。
抽選で当選し割安の公募価格で株を購入し、初値が付いた瞬間に売却する「初値売り」は、熟練の投資家と一切トレードをせずに利益を確定させる行為なので、特別な知識や経験を必要としません。
またIPO投資は確立された投資法なので、IPOが発表されれば初値を予想するサイトがたくさんあります。初値が公募価格を上回る予想がされているIPOに参加すれば、基本的には「公募割れする地雷IPO」を避けることができます。
もちろん「初値売りしなけりゃもっと儲かったのに!」というパターンもあります。
私が経験した最たるはマクアケの当選200株。
マネックスと大和証券でそれぞれ100株ずつ当選し、計200株を初値売りしました。
公募1,550円に対し初値2,710円、初値売りで116,000円×2の利益となりましたが、数か月後には株価10,000円を超えました。
初値で売却せずに所有を続け、最も株価高騰したタイミングで売却できていれば、200万円程の利益が出ていたわけですが、それは「タラレバ」です。
初値が付いてそのあとずっ~と下落し続ける銘柄も多くあります。初心者のうちは機械的に利益を確定させる「初値売り」が良いと思います。
IPOに当選するためには
そもそも当選するのか?という疑問について。
IPO投資は当選しさえすれば高い確率で利益が見込めるため、抽選に申し込みが殺到し、なかなか当選しません。当選するためにはそれなりの努力が必要です。
IPO株を入手する方法として、「裁量配分」と「抽選配分」があります。
裁量配分は証券会社の店頭で株取引を行う顧客に対し、各証券会社担当者の裁量でIPO株を振り分ける方法。
抽選配分はネット証券を中心に申し込みに対してコンピューターで機械的、平等に抽選し、当選者を決める方法。
それなりに潤沢な資金と店頭での取引実績を持った、いわゆるお金持ちの「お得意様」でなければ裁量配分でIPO株を得るのは難しいでしょう。
私のようにIPO投資に投じることができる資金が限られている庶民投資家は、資金の多寡に関係なく機械的、平等に抽選されるネット証券で抽選配分を狙ってWEB申し込みをすることになります。
抽選配分で大切なのは「運力」です。
少しでも当選確率を上げるためには、できる限り多くの証券会社で証券口座を開設し、IPOのネット抽選に参加するしかありません。
要は、数打てば当たる作戦です。資金力の差を物量作戦で凌駕!!
私は20証券60口座以上の口座からIPO抽選に申し込んでいます。
IPOにおすすめの証券会社
IPOに当選するためには多くの証券会社で口座開設をし、ひたすら申し込む物量作戦が基本戦略となります。
一方で、そうは言っても資金が潤沢でない庶民投資家は、限られた資金を最大限有効活用するためにIPO当選の期待値の高い証券会社から優先的に申し込みしていくという考え方も必要になります。
IPO取扱数
IPOを多く取り扱っている証券会社=IPO抽選に参加し当選するチャンスが多い証券会社です。
①SBI証券 122社
②みずほ証券 83社
③SMBC日興証券 80社
④楽天証券 74社
⑤マネックス証券 65社
⑥野村證券 64社
⑦松井証券 56社
⑧大和証券 49社
⑨三菱UFJモルガンスタンレー証券 45社
⑩岩井コスモ証券 45社
少ない資金でネット抽選枠からIPO投資にチャレンジするのであれば、取扱数TOP10社の口座開設は必須かと思います。
口座開設数
口座開設数が多い=IPO抽選申し込みをするライバルも多い証券会社です。
①SBI証券 801万
②楽天証券 714万
③野村證券 536万
④SMBC日興証券 373万
⑤大和証券 303万
⑥マネックス証券 219万
⑦みずほ証券 185万
⑧auカブコム 141万
⑨松井証券 137万
⑩岡三証券 50万
抽選方式
証券会社に配分された株数100%のうち、どのくらいをネットで平等に抽選してくれるかで大きく当選確率が変わってきます。
2021年IPO取扱数TOP5社の抽選方式を見てみましょう。
- 1位.SBI証券・・・約50%をネット抽選(30%を完全抽選、15%をIPOチャレンジP抽選。5%を裁量配分)
- 2位.みずほ証券・・・約10%をネットで完全平等抽選
- 3位.SMBC日興証券・・・約10%をネットで完全平等抽選
- 4位.楽天証券・・・100%をネットで完全平等抽選
- 5位.マネックス証券・・・100%をネットで完全平等抽選
楽天証券やマネックス証券は主幹事を務めることはないですが、引受けた株をそのままネットで100%完全平等抽選してくれるため、「平幹事の中では最も当選期待の高い証券会社」と言えます。
同一資金重複申込可能かどうか
IPO時、いくらで何株申し込むかを証券会社に対して申告することをブックビルディング(需要申告)と言います。「もし当選したら購入します」という予約のようなもので、予約の積み上げにより公募価格を正式決定します。
厳密には異なりますが「需要申告する」=「抽選申し込みする」という理解で良いと思います。
複数のIPO抽選に申し込む際、それぞれの銘柄の資金が証券口座に必要な証券会社と、同一の資金で複数の銘柄に抽選申し込みができる証券会社があります。
- IPO【A】必要資金15万円
- IPO【B】必要資金20万円
- IPO【C】必要資金30万円
資金30万円でABCのIPO抽選に申込むことができる
- IPO【A】必要資金15万円
- IPO【B】必要資金20万円
- IPO【C】必要資金30万円
ABCのIPO抽選に申込むにはそれぞれの資金(合計65万円)が必要
同一資金重複申込不可の証券会社では、]IPOが重なってきたらそれぞれの資金を用意するのは厳しくなります。
一方で自分が厳しい=競争者も厳しい⇒当選確率が上がるので、一概にデメリットとは言えません。むしろメリット!
0円申し込み可能かどうか
証券会社の中には、IPO抽選申し込み時に資金は不要で、当選したら初めて入金し購入申し込みをすればOKというルールを採用している会社も多いです。
- 野村證券
- 岡三オンライン証券
- むさし証券
- SBIネオトレード証券
- エイチエス証券
- DMM.com証券 等
当選したら期日までに入金し購入申し込みすればOKです。
お気軽に抽選申込みできるのがメリット。逆に競争者が多くなり過ぎて当選確率が激低いのがデメリットです。
未成年口座
IPOに当選するためには多くの口座から申し込み当選確率を少しでも上げる「物量作戦」が基本戦略です。
配偶者がいらっしゃるご家庭はご夫婦で、お子様がいらっしゃるご家庭はお子様の未成年口座も開設してIPO抽選申し込みをすれば、単純に当選確率が2倍、3倍、4倍になります。
未成年口座は親権者の責任でIPO抽選申し込みを行います。
- SBI証券
- マネックス証券
- 楽天証券
- 松井証券
- 岡三オンライン証券
- auカブコム証券
- エイチエス証券
4人家族の我が家では上記全ての証券会社で4口座開設し抽選申込しています。
代表的証券会社の特色を3社抜粋
IPOを扱う証券会社にもそれぞれ特色があります。簡単に3社ご紹介します。
SBI証券
SBI証券は主幹事となることが非常に多い証券会社です。IPO取扱数NO1。
IPO投資を行う上で口座開設必須の証券会社です。
抽選ルールはお金持ちに有利な「申込口数に対しての抽選方式」となっており、少ない資金で通常抽選での当選は期待薄です。
軍資金3000万円のお金持ちが30万円の株に応募できるのは100口
当選確率に10倍の差が出る。この場合私の当選確率はお金持ちの1/10
それを救済するのがIPOチャレンジポイント。
抽選される15%の当選分はIPOチャレンジポイントが多い順に配分される仕組みです。
1回落選する毎に1ポイントポイントがもらえます。落ち続けても粘り強く抽選申し込みを続けていれば(制度が変わらない限り)いつか必ず当選できる仕組みになっています。
SBI証券は未成年口座開設&IPOにネット申込みが可能なので、我が家では自分、嫁様、長男、長女と計4口座開設し、ひたすらポイントを貯めるために落選を続けています。
マネックス証券
主幹事はあまりありませんが、平幹事は非常に多いマネックス証券。
IPO抽選ルールは申込口数に対してではなく、申込口座に対して行います。つまり1人1票。
お金持ちの1口座も庶民の1口座も平等。資金の多寡に関係無く「運」の勝負となる完全平等抽選です。
マネックス証券はIPO投資と非常に相性の良い『立会外分売』も取り扱っています。
マネックス証券も未成年口座開設&IPOにネット申込みが可能なので、我が家では4口座でIPO抽選申込みを続けています。
松井証券
主幹事はあまりありませんが、平幹事は非常に多いです。
完全平等抽選です。さらに申込時に資金が必要ありません(入金0円で申込できます)。
抽選で当選した場合、必要資金を入金し購入する、という流れです。
松井証も立会外分売を取り扱っており、高い当選率で重宝しています。
松井証券も未成年口座開設&IPOにネット申込みが可能なので、我が家では4口座でIPO抽選申込みを続けています。
IPO抽選に参加し売却する流れ
IPO抽選に参加し、初値で売却するまでの流れです。
- 証券会社の口座を開設する
- 資金が必要な証券会社であれば必要資金を入金する
- IPOのスケジュールを確認し、抽選参加したいIPOに申込む
- 抽選結果を確認する(落選ならここで終了)
- 購入申込みをする
- (初値で)売却する
現実的には「抽選申込み→落選確認」を淡々と繰り返す単純作業です。
まとめ
IPOの仕組みとその魅力を自分の経験に基づきご紹介させていただきました。
IPO投資とは
- 企業が新規上場する際に公募価格で株を購入し、市場で売却することにより差益を得ること
- 直近5年の勝率(初値が公募を上回る)は70~90%
- 滅多に当選しない。当選しても損をすることもある
- 当選すればハイリターン。落選してもお金は戻ってくる
- 当選確率を上げるためには物量作戦。できるだけ多くの口座から申込む必要がある
投資は熟練者と素人、資産家と庶民で大きな差が付き、その差を埋めるのは困難です。
ですが機械的に抽選が行われるネット抽選であれば「ただのくじ引き」なので、運の要素が強いため初心者でも利益の出しやすい投資だと思います。
そして抽選に外れても失うものはネット申込みに要した数分程度。
私自身がIPO投資歴3年の初心者ですが、趣味と投資を兼ね備えたIPO抽選を愉しんでいます。
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